VRリハビリの話になると、現場ではだいたい二つの反応に割れます。「もう試したけど、患者さんが最初だけ喜んで終わった」という冷めた反応と、「機器さえ入れば劇的に変わるはず」という過剰な期待。どちらも、VRが実際にどれくらい効くのかという数字を見ていないという点では同じです。

幸い、この領域は答え合わせがしやすい分野になりました。2025年6月20日、Cochraneが脳卒中のVRリハビリのレビューを更新しました(Laver KE ほか, Cochrane Database Syst Rev, 2025, CD008349.pub5, PMID: 40537150)。190のランダム化比較試験、参加者7,188名。2017年版から119試験が新規に追加された、この分野で現時点で最大の統合結果です。

そして、そこに出ている数字は、期待派にも懐疑派にも少し居心地の悪いものでした。

Cochrane 2025年版が出した数字——「単独では小さい」

まず、VRを他の治療の代わりに使った場合。上肢機能・活動に対する効果量はSMD 0.20(95%CI 0.12〜0.28、67試験2,830名、エビデンスの確実性:低)でした。統計的には有意ですが、効果量0.20は一般に「小さい」と分類される大きさです。バランスはSMD 0.26(24試験871名、低)、活動制限はSMD 0.21(33試験1,495名、中)。歩行速度については「ほとんど差がないかもしれないが、エビデンスは非常に不確実」(10試験304名)とされました。

ところが、VRを通常のリハビリに上乗せして使った場合、数字は変わります。上肢機能・活動はSMD 0.42(95%CI 0.26〜0.58、21試験689名、中)、バランスはSMD 0.68(95%CI 0.46〜0.91、12試験321名、低)。上乗せ群は当然ながら総訓練時間が増えているので、これはVR固有の効果というより「訓練量が増えたぶんの効果」を含んだ数字だと読むのが正確です。

つまり、現時点でのいちばん誠実な要約はこうなります。VRは既存の訓練を置き換える手段としては小さな上積みしか生まないが、訓練量を増やす手段としてなら、それなりに大きな差を生む

この一文の意味が分かると、機器を入れるべきかどうかの判断基準が根本から変わります。「VRのほうが効くから買う」ではありません。「うちの患者さんの訓練量は、いま足りているのか」を先に問うことになるからです。訓練量が足りていない施設にとってVRは有力な選択肢になり、すでに十分な単位数を出せている施設にとっては、高価な補助輪にしかならない可能性がある。同じ機器が、施設によって当たりにも外れにもなります。

そして、ここから先が本題です。上の数字はあくまで脳卒中の話であって、腰痛・変形性膝関節症・術後リハでは効果量も、効く出方もかなり違います。ARに至っては、VRと同じ枠で語ってはいけない別物です。さらに厄介なことに、この領域の論文には効果量がありえないほど大きく出ている報告が混ざっており、それを鵜呑みにすると導入判断を丸ごと誤ります。

以下では、PubMedで書誌を照合した実在論文6本を領域ごとにレビューし、効果量の読み方、ARとVRの使い分け、導入して失敗する4パターン、そしてカタログを開く前に順番に答えるべき5つの問いまでを、具体的に見ていきます。