文部科学省が初等中等教育向けに出している生成AIのガイドラインは、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」として、令和6年12月26日に更新されました。前身の暫定的なガイドライン(令和5年7月)から、バージョンが上がっています。

一方、大学・高等専門学校向けに出ているのは「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」で、発出は令和5年7月13日。しかも文書の種別は「通知」ではなく「周知」で、バージョン番号もありません。2023年のまま、更新されていません。

この落差の中に、いまの臨床実習が置かれています。小中高には更新されたガイドラインがあり、養成校には2年以上前の周知文書しかない。つまり、実習の現場でどう扱うかは、事実上それぞれの施設と指導者に委ねられているということです。

そして、待ってはくれません。学生はすでに使っています。

禁止という選択肢は、実質的にもう存在しない

「実習中は生成AIの使用を禁止する」。これは一見わかりやすい対応ですが、二重の意味で機能しません。

ひとつは、検出できないからです。 自宅で書いたレポートの下書きにAIを使ったかどうかを、指導者が確実に判定する方法はありません。判定できないルールは、守る学生だけが不利になります。

もうひとつは、これから使う職場に出て行くからです。 使わせずに卒業させることは、使い方を教えないまま現場に送り出すことと同じです。

だから問いは「使わせるかどうか」ではなく、「どう使わせ、何を確認するか」に移ります。そしてこの問いには、実は制度と研究の両側から、かなり具体的な答えが出せます。

実は、制度の側にヒントがある

意外に思われるかもしれませんが、この問題を解く鍵の一つは、2020年施行の指定規則改正のなかにあります。

改正で臨床実習の単位数は増えました。しかし同時に、1単位あたりの時間に上限が設けられました。しかもその上限は、実習時間外に学生が自宅で行う学修まで含めてカウントされます。この規定が置かれた背景には、改善検討会が把握した「学生の持ち帰り課題」の実態がありました。

つまり「たくさん書かせて学ばせる」というやり方は、AI以前に、制度の側からすでに封じられているのです。時間の総量で勝負できないなら、残る道は課題の中身を変えることしかない。AIへの対応と、実習の負担軽減という別々に見える2つの課題が、実は同じ解に収束します。

そして研究の側からも、指導設計に直結する知見が出ています。とくに重要なのが、学生の「AIが役に立った」という手応えが、実際に成績が上がったかどうかをまったく区別していないという結果です。自己評価が当てにならないなら、指導の仕組みでそこを補うしかありません。

以下では、動かせない制度の枠を一次資料で正確に確認したうえで、医学教育領域の実在論文4本が示す学生とAIの実態を整理し、そのまま学生に配れるAI利用ルール4条と、AIで解けない形に課題を作り替える3つの型を提示します。