予後予測ツールが臨床に入ってきて、いちばん最初にぶつかる壁は、精度ではありません。「それを、本人にどう伝えるか」です。

このことは、実は研究でも確認されています。デンマークの神経リハビリテーションセンターで、理学療法士・作業療法士に上肢の予後予測アルゴリズムPREP2についてフォーカスグループ・インタビューを行った質的研究があります(Lundquist CB ほか, BMJ Open. 2021;11(4):e038880, PMID: 33827826)。

そこで挙がった障壁は2つでした。ひとつはアルゴリズムの精度への懸念。そしてもうひとつが、原文の表現をそのまま訳せば、「患者に予後を突きつけなければならないことから生じるジレンマを恐れていた(dreaded)」

恐れる、という語が使われています。ツールへの不信ではなく、伝える行為そのものへの恐れです。この感覚は、おそらく多くの臨床家に共通するものだと思います。

まず、数字の内訳を正確に知る

伝え方を考える前に、そもそも予測がどれくらい当たるのかを、平均値ではなくカテゴリ別に見ておく必要があります。ここに、伝え方の答えの半分が入っているからです。

PREP2は、脳卒中発症1週間以内の臨床評価と経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、3か月後の上肢機能の転帰を4段階(Excellent/Good/Limited/Poor)で予測するツールです。2017年にニュージーランドのオークランド市立病院で臨床導入され、その後の運用実績が報告されています。

実際の日常診療のなかで臨床家が行った予測の精度を検証した研究(Jordan H ほか, Neurorehabil Neural Repair. 2026;40(3):235-245, PMID: 41574464)は、83名を対象にこう報告しました。

全体の正確度 66%(95%CI 55〜76%)。研究があらかじめ設定していた検証の閾値70%には届きませんでした。

ところが、カテゴリ別に分解すると景色が変わります。Poor(不良)の予測は100%、Excellent(優秀)は80%。一方でGood(良好)はわずか36%。しかもGoodのうち、TMSを要さなかった患者では67%、TMSを要した患者では27%まで落ちました。

この形を一言でまとめると、「両端は当たり、真ん中は外れる」となります。そして、ここが伝え方の設計にとって決定的です。予測を「当たる・当たらない」の二択で扱うと、この構造が消えてしまうからです。66%という平均値だけを見て「まあまあ当たる」と思って伝えると、いちばん外れやすいカテゴリの人に、いちばん強い言葉を渡してしまうことになります。

しかも、この非対称性には続きがあります。予測が外れるとき、外れる向きに偏りがあること。そして認知機能の状態によって、精度そのものが大きく変わること。この2つを知らずに伝えると、いちばん傷つきやすい人に、いちばん不正確な情報を、いちばん断定的に渡す——という最悪の組み合わせが起こりえます。

以下では、独立した外部検証コホートでの数値、予測モデル全般の報告品質、そして「言葉そのものが症状をつくる」ノセボ研究を確認したうえで、確率を絶望に変えず、かつ嘘もつかない説明の4ステップと逐語例を提示します。