• アリババのDAMO Academyが開発した医療AI「DAMO RADAR」が2026年9月18日にScience誌に掲載され、腹部CT画像から146の臨床所見を検出できることが示されました。
  • 26人の放射線科医との比較試験で23人を上回る平均精度(AUC 0.913)を達成し、放射線科医が補助ツールとして使用すると見落とし診断が10%、診断時間が30%以上改善されたとされています。
  • コードとモデル重みはGitHubおよびHugging Faceで公開されており、研究目的での利用が可能とされています。

事実の整理

2026年9月18日、中国アリババグループ傘下のDAMO Academyは、腹部CT画像を読影する汎用医療AI「DAMO RADAR(Radiology AI for Diagnostic Assistance and Review)」の研究成果をScience誌に発表したとされています。

DAMO RADARの主な仕様として、約42万5,000件のcontrast-enhanced(造影)腹部CT検査と150万件以上の画像テキストペアで学習されたビジョン言語モデルとされています。検出対象は18の腹部臓器にわたる146の臨床所見で、悪性腫瘍を含む幅広い疾患・異常が含まれるとされています。

パフォーマンスの検証では、約4万件の実際の検査データを用いた評価で146所見にわたる平均AUCが0.913とされています(競合する最高水準のビジョン言語モデルは0.776)。複数病院の放射線科医26人との比較試験では、平均スコアで26人中23人を上回る結果が報告されています。また、放射線科医がDAMO RADARを補助ツールとして使用した場合、見落とし診断が10%減少し、診断時間が30%以上短縮されたとされています。

公開方法について、コードはGitHubとHugging FaceでApache 2.0ライセンスのもと公開され、モデル重みはCC BY-NC-SA 4.0ライセンスで別途配布されています。後者は研究・非商用利用を許可しており、商用展開には別途契約が必要とされています。

研究チームはアリババDAMO Academy、浙江大学および関連病院のQi Zhangら複数の研究者で構成されているとされています。

臨床家にとっての意味

セラピスト・理学療法士の実務に直接関係するのは、診断のより早い段階で患者状態の全体像が把握されやすくなる可能性という点です。

現時点で言えることとして、腹部疾患(内臓疾患、腫瘍、血管異常など)の見落としが減れば、セラピストが関わる時点で患者の基礎疾患がより適切に把握されている可能性があります。理学療法士が「なぜこの患者の症状が改善しないのか」と感じる場面の一部は、画像診断で見落とされていた病態が関係することがあります。医療AIによる診断精度の向上は、こうした背景疾患の早期発見につながりうるとされています。

また、DAMO RADARが「診断補助ツール」として機能することで、専門医の診断にかかる時間が短縮される可能性があります。診断時間の短縮は、患者が適切な治療チームにたどり着くまでの時間を縮める可能性があり、リハビリ介入のタイミングに影響しうる要素です。

まだ言えないこととして、DAMO RADARはあくまで腹部CTの読影を補助するツールであり、運動器疾患・神経疾患・筋骨格系への直接的な応用は現時点では示されていません。また、今回の研究は中国の病院データを主体に行われており、異なる医療環境での再現性は今後の検証を要します。臨床への本格実装や保険適用については現段階では不明確な部分が多く、実際の診療現場での普及には規制審査や実装コストなど多くのハードルが残されているとされています。

今回の発表が示すのは、AIが単一臓器・単一疾患の専門ツールから、複数臓器・多疾患を同時に扱う汎用ツールへと移行しつつあることです。この方向性は、リハビリに関わる臨床家がAIとどのように協働していくかを考えるうえで、注目しておくべき流れの一つです。

出典

  1. Alibaba open-sources medical AI model that can detect cancer and nearly 150 conditions(South China Morning Post, 2026年9月18日)
  2. Alibaba open-sources AI model for detecting 150 abdominal diseases(TechBriefly, 2026年9月21日)
  3. Alibaba Radiology AI Outperforms 23 of 26 Radiologists Across 146 Diseases in Science(TechTimes, 2026年9月19日)

本記事は情報提供目的であり、特定の製品・サービスの推奨や効果の保証をするものではありません。医療上の判断は必ず担当医・専門医にご確認ください。