- 米国退役軍人省(VA)は2026年9月22日、AI企業Abridgeの環境型AI臨床記録システムを最大7億7,572万ドル(約1,160億円相当)・5年間の多社対象契約枠に選定したと発表しました。
- Abridgeは診察中の会話をリアルタイムで記録・分析し、電子カルテへの記録草案を自動生成するシステムで、現時点ですでに75か所以上のVA医療センターで稼働中とされています。
- 医師が最終確認・承認するまでカルテへの書き込みは行わない設計で、28言語以上に対応しているとされています。
事実の整理
2026年9月22日、米国退役軍人省(U.S. Department of Veterans Affairs、以下VA)はAI企業AbridgeをVA全域向けのアンビエントAI臨床記録契約に選定したと発表しました。この契約は複数社が受注可能なIDIQ(不定数量)方式で、総額の上限は5年間で最大7億7,572万ドルとされています。
VAは米国最大の統合型医療ネットワークであり、900万人以上の退役軍人に医療を提供し、1,380か所の医療施設(170か所のVA医療センターと1,200か所近くの外来診療所)を有しています。Abridgeのシステムはすでに75か所以上のVA医療センターで本番稼働しており、外来初期診療・12の医学外科専門科・VA遠隔医療ネットワーク(Clinical Resource Hubs)にわたって展開されているとされています。
Abridgeは診察室での医師と患者のやり取りをリアルタイムで収集・分析し、電子カルテへの記録草案を自動生成するアンビエント(環境型)AIです。同社のプレスリリースによれば、従来のVA電子カルテ「VistA/CPRS」と新規導入中の「Federal EHR」双方に対応しているとされています。患者の音声データを収集するにあたっては明示的な同意が必要とされており、生成された記録草案は医師が確認・承認した後にのみ正式にカルテへ反映される設計とされています。
臨床家にとっての意味
日本の理学療法士・作業療法士・柔道整復師・鍼灸師などのセラピストにとって、臨床記録は欠かせない業務である一方、診療後の記録作業は時間的な大きな負担となっているケースが少なくありません。今回のVA事例は、その課題に対してアンビエントAIが公的医療機関レベルで実際に運用されていることを示す事例として注目されます。
現時点で言えること:アンビエントAIによる自動記録支援の技術的な実現可能性は、米国の大規模公的医療機関で実証段階を超えつつあるとされています。記録草案の精度評価や多言語対応(28言語以上)は、将来的に日本語環境での類似システム開発の参考になる可能性があります。
まだ言えないこと:日本の医療・リハビリテーション環境でどのように活用できるかについては、今回の発表からは読み取れません。日本の電子カルテシステムへの対応、日本語の音声認識精度、医療記録に関する法的要件など、国ごとに異なる条件の整備が今後の課題となります。また、Abridgeが生成した記録草案の臨床的品質や、長期的な運用コスト・医療従事者の受容性についても、今回の発表だけでは評価できません。
現場のセラピストが今できることとしては、自院・自施設でのAI活用可能性を具体的に検討する際の参考情報として、この種の事例の動向を継続的に把握しておくことが考えられます。
出典
- Abridge Selected to Bring Ambient AI to Veteran Care Nationwide Through the VA Enterprise Contract(Abridge公式プレスリリース, 2026年9月22日)
- Abridge Wins Seat on $775.7M VA Enterprise Contract to Power Ambient Clinical AI(HIT Consultant, 2026年9月22日)
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