• シンガポールのSt Luke's Hospitalとヘルステック企業Robotimize Groupが2026年9月18日、AIと外骨格技術を活用した「リハビリテーション卓越センター」構築に向けた覚書(MOU)を締結したと発表されています。
  • 対象領域は日中リハビリ・筋力訓練プログラム・虚弱管理・神経疾患・急性期後の体調回復と幅広く、単一機器の試験導入ではなく長期的なエコシステム構築が目指されるとされています。
  • 採用の課題は技術だけでなく、臨床プロトコル・スタッフ育成・業務フローへの統合にあるという認識のもと、包括的な取り組みとして位置づけられています。

事実の整理

2026年9月9日〜11日にシンガポールのマリーナベイサンズで開催された「Medical Fair Asia 2026」。この医療見本市の会期中に行われた「MotusAcademy × REHACARE Asia リーダーシップフォーラム」の場で、Robotimize Groupとシンガポールのコミュニティ病院St Luke's Hospitalは、テクノロジー対応のリハビリテーション卓越センター構築を目的とした覚書(MOU)を締結したと発表しています(同社プレスリリース、2026年9月18日付)。

St Luke's Hospitalは入院・外来・在宅・地域プログラムにわたって年間7,200人以上の患者に医療を提供しているとされており、リハビリテーション・認知症ケア・創傷ケア・緩和ケアを主な専門分野としているとのことです。

Robotimizeが同パートナーシップで提供するとしている主な技術は以下のとおりです。

  • VivantePlexus™:統合リハビリテーション技術エコシステム
  • GoGo:歩行支援外骨格システム
  • HandVivante™ MirrorHand:ロボット式ミラーハンドデバイス
  • ACE™:戦略的パートナーシップポートフォリオ

MOUが対象とする臨床領域は日中リハビリテーション・ジム型訓練プログラム・虚弱(フレイル)管理・神経疾患リハビリテーション・急性期後の体調悪化の5領域とされています。

RobotimizeのCEO・Kerry Guo氏は「信頼できるリハビリテーションと高齢者ケアの実績を持つSt Luke'sとの協業こそ、私たちが求めていた形です」と述べているとされています。また、Scientific AdvisorのZen Koh氏は「技術が認められるのは、利用者にとって本当に重要なことを実現できたときです。採用の成功は技術の問題だけではありません」と語ったとされており、業務フロー・人材育成・インセンティブ・サービスモデルを含む包括的な取り組みとして同パートナーシップを位置づけています。

なお、今回の展示会「Medical Fair Asia 2026」は約40の国・地域から1,000社以上が出展した大規模な医療機器・テクノロジーの見本市で、AIを活用した術前評価技術やウェアラブルリハビリデバイス、ロボット歩行デモンストレーションなどが披露されたとされています。

臨床家にとっての意味

このパートナーシップが注目に値する点は、「機器の購入・試験導入」ではなく「エコシステムの長期的な構築」を正面に据えている姿勢にあります。

リハビリテーションロボットや外骨格の臨床導入において、これまで多くの施設が直面してきた課題は、機器そのものの性能よりも「誰がどの患者にいつ使うのか」「スタッフのトレーニングをどう確保するか」「既存の診療録システムとどう連携するか」といった運用面の問題であることが少なくありませんでした。今回のMOUが「能力構築(capability-building)」「研究」「技術導入」の3本柱を掲げ、単発のパイロット導入ではなく長期的な協力関係を前提としている点は、こうした実運用上の壁を乗り越えようとする現実的なアプローチといえます。

現時点で言えることとしては、シンガポールという医療先進国において、病院とテクノロジー企業が外骨格・AIエコシステムを通じた包括的なリハビリテーション環境の構築に向けて動き出したということです。対象とされている虚弱管理・神経疾患リハビリテーション・急性期後の体調回復は、理学療法士・作業療法士が日常的に携わる領域であり、こうした取り組みが普及した場合、セラピストの役割が「直接的な徒手介入」のみならず「AIや外骨格を活用した訓練プログラムの立案と監督」へと広がっていく可能性があります。

具体的には、外骨格を用いた歩行訓練の強度や繰り返し回数を記録・分析するAIシステムが導入されれば、セラピストはより客観的なデータに基づいてプログラムを調整できる可能性があります。また、上肢のロボット補助(HandVivante™ MirrorHand)が神経疾患患者の手指訓練に活用されれば、セラピスト1人あたりが対応できる訓練量が変化することも考えられます。

一方で、まだ言えないことも少なくありません。今回のMOUは長期的な協力の枠組みを定めるものであり、臨床的な有効性や患者アウトカムへの具体的な影響については現時点でデータは公表されていません。また、日本の医療・介護保険制度や診療報酬体系は前提が異なるため、国内の実務への直接的な適用可能性については引き続き情報を精査する必要があります。

アジアの医療現場でリハビリテーションロボットが「試験機」から「実運用ツール」へと移行し始める動きが出てきた今、国内で働くセラピストにとっても無関係ではなくなりつつある可能性があります。こうした海外事例の動向を把握しておくことは、今後の臨床実践や施設選定の判断材料となりえます。

出典

  1. Robotimize and St Luke's Hospital Unite to Advance Rehabilitation Centre of Excellence(EIN Presswire, 2026年9月18日)
  2. Robotimize Showcases Technology and Forges Partnerships at Medical Fair Asia 2026(EIN Presswire, 2026年9月)
  3. Robotimize and St Luke's Hospital Unite to Advance Rehabilitation Centre of Excellence(Robotimize公式ブログ, 2026年9月23日)

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