- 2026年10月7〜9日、東京ビッグサイトで「H.C.R.2026 第53回国際福祉機器展&フォーラム」が開催され、3日間累計110,958名が来場しました
- 頸部センサーでAIが嚥下音を識別する技術や、衣類の仕分け・折り畳みを行う介護支援ロボットなどが展示されました
- 政府は2040年に272万人の介護職員が必要と推計しており、テクノロジーによる人手不足の補完が業界全体の課題とされています
事実の整理
アジア最大級の福祉・リハビリテーション機器の見本市「H.C.R.2026 第53回国際福祉機器展&フォーラム」が2026年10月7日(水)から9日(金)の3日間、東京国際展示場(東京ビッグサイト)東展示ホールで開催されました。テーマは「クリエイティブな未来を拓く」とされており、9か国2地域から382社・団体が出展、3日間の累計来場者数は110,958名に達したとされています。
注目を集めた技術の一つが、Primes社が展示した嚥下音識別AIです。頸部に装着するセンサーで収集した音データをAIがリアルタイムで解析し、嚥下の状態を識別するとされています。嚥下機能の評価・管理は言語聴覚士や理学療法士が深く関わる臨床領域であり、センサーベースのAI識別技術が実用化されれば、従来の嚥下評価で必要だった専門設備や手順を補完できる可能性があるとされています。
介護ロボットの分野では、Enactic社が「Ena」を展示しました。Enaは衣類の折り畳みや仕分けを遠隔操作で実行できる介護補助ロボットで、現在も開発・テスト段階にあるとされています。洗濯物処理のような周辺業務を自動化することで、介護職員が入浴介助や食事介助など直接ケアに集中できる時間を確保することが期待されているとされています。
その他の展示として、Paramount Bed社が排泄状態を検知する「おむつCOLOR」とトイレ利用状況を記録する「トイレDIARY」を出展しました。排泄ケアはリハビリとも密接に関連する生活支援の基本領域であり、センサーとデータ管理によるアプローチへの関心が高まっているとされています。また食事介助ロボット「Obi」や立ち上がり補助機器「独立宣言ムーブ」、ポータブル洗髪デバイス「SUSUGU」なども紹介されました。さらにトヨタ・日産・ダイハツ・スズキなど自動車各社もアクセシブルな車両を展示し、移動支援という視点からの参加がみられました。
こうした技術が相次いで展示される背景には、深刻な人手不足の現実があります。日本政府は2040年までに272万人の介護職員が必要と推計しており、現在の供給では大幅に不足するとされています。テクノロジーによる業務効率化と人手不足の補完は、介護・リハビリ業界全体が直面する構造的な課題とされています。
臨床家にとっての意味
今回の展示会で示された技術は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など臨床家の実務にどのような意味をもちうるのでしょうか。現時点で言えることと言えないことを整理します。
嚥下音識別AI(Primes社)について、可能性として考えられることは、まず日常的な嚥下状態のモニタリングや早期スクリーニングへの活用です。病院の精密検査(嚥下造影・内視鏡検査など)とは別に、在宅や施設での継続的な観察補助として機能する可能性があります。一方で、現時点での臨床精度・安全性・医療機器としての規制上の位置づけについては、展示段階の技術であることから明確な情報はありません。実際の臨床判断を支援するためには、今後の臨床試験や規制当局による審査が必要とされます。AIによる嚥下音識別は、あくまで専門職の評価を補助する情報の一つとして位置づけることが重要とされています。
介護補助ロボット全般について、展示されているものの多くは「直接ケアの代替」ではなく、「周辺業務の負担軽減」を目的としているとされています。洗濯物の仕分け・排泄検知・食事介助のサポートなどが自動化・補助されれば、セラピストが評価・治療・関係構築に割ける時間が増える可能性があります。ただし導入コストや操作トレーニングの負担、実際の施設環境への適合性などについては、個々の現場で慎重に検証することが求められるとされています。
全体的なトレンドとして、今回の展示会は「介護テクノロジーが研究室から、より現場に近い実用段階へ移行しつつある」状況を示す一つの指標と言えます。同時に、展示レベルの技術が実際の臨床・介護現場で安定して機能するかどうかは、今後の実証研究と現場での試行によって明らかになる段階にあります。
セラピストとして今できることは、こうした技術の動向を把握しながら、自分たちの臨床場面にどう活かせるかを継続的に評価していくことではないでしょうか。展示会への参加やデモ体験を通じて、技術の実態を自らの目で確認することも、専門職としての重要な情報収集の一つとされています。H.C.R.のWeb展示は2026年11月13日まで公開されているとされており、現地来場が叶わなかった方もオンラインで情報を確認できます。
出典
- 「衣類を仕分けするロボット、嚥下を監視するAI」―日本の介護ソリューション?(FNN News, 2026年10月12日)
- H.C.R.2026 第53回国際福祉機器展&フォーラム 開催案内(Excite News / AT Press, 2026年)
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