• 厚生労働省が2026年9月29日に公表した令和8年版厚生労働白書で、医師の診断支援AIへの賛成が72.4%、介護コミュニケーションロボットへの賛成が73.8%と、いずれも7割を超えることが示されています。
  • 調査は2026年1〜2月にインターネットで実施され、20〜74歳の約3,000人が回答したとされています。
  • 担い手不足への不安は医療分野で74.5%、介護・福祉分野で81.3%に上っており、白書は2040年ごろの高齢者人口ピークを見据えてテクノロジー活用の重要性を強調しています。

事実の整理

厚生労働省は2026年9月29日、令和8年版厚生労働白書を閣議報告しました。今回の白書のテーマは「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」とされており、第1部第2章において、ICT・AI・ロボット等の現場活用と、それに対する国民の受け止めについて特集されています。

白書に盛り込まれた国民意識調査は、2026年1月から2月にかけてインターネット上で実施され、20歳から74歳の約3,000人から有効回答を得たとされています。

調査結果のうち、医療・介護関係者にとって注目される数値として以下が報告されています。医師の診断を支援するAIの導入に賛成(「やや賛成」を含む)した人の割合は72.4%とされています。また、介護者と利用者のコミュニケーションを担うロボットの導入に賛成した人の割合は73.8%と報じられています。先端技術の導入に関するすべての設問で、肯定的な回答が70%を超えたとされています。

担い手不足への不安については、医療分野で74.5%、介護・福祉分野で81.3%の人が不安を感じていると回答したとされています。

白書はこうした調査結果を踏まえ、「65歳以上の高齢者人口が2040年ごろにピークを迎える」という見通しを背景に、医療・介護・福祉の現場での「テクノロジーを活用した効率化や生産性向上の取り組みが重要だ」と強調しているとされています。

臨床家にとっての意味

今回の調査結果は、理学療法士・作業療法士・柔道整復師・鍼灸師をはじめとするセラピストの実務を考えるうえで、いくつかの視点を提供しています。

まず、患者・利用者がAIやロボットを受け入れる素地が社会的に育ちつつあるという点は、現時点で確認できることのひとつです。診断支援AIへの賛成が7割を超えるということは、患者側もテクノロジーが医療の一部に組み込まれることを以前より受け入れやすくなっている可能性があります。ただし、この調査は「概ね賛成かどうか」を問うものであり、特定の機器や使い方への信頼を示すものではないことに注意が必要です。

次に、担い手不足への不安とテクノロジー活用が表裏一体になっている点は、セラピストの職場環境に直結します。介護・福祉分野で8割超が人手不足を不安視しているという数値は、リハビリ職・介護職がかかわる現場でのロボット・AI導入が、単なる「技術の話」ではなく、働く環境の変化として実感されつつあることを示している可能性があります。

一方で、現時点でまだ言えないことも明確にしておく必要があります。今回の白書は国民全体の意識調査であり、「実際にAI・ロボットが治療や介護の質を向上させる」という効果を示すものではありません。回答者が実際の医療・介護場面でAIやロボットを体験したかどうかも不明であり、「賛成する」という回答が、実際の導入場面で同様の態度をとることを意味するとは限りません。

セラピストとして実務に関係づけるなら、「社会的な許容度が高まっているなかで、自分の専門領域にどのような技術が入ってきているかを継続的に把握しておく」という姿勢が、現段階では最も実践的といえるでしょう。自らの専門性とテクノロジーがどのように補完し合えるかを考える機会として、こうした政策動向を参照することには意義があると思われます。

白書全体は厚生労働省の公式ページで閲覧できるとされています。第1部第2章の内容が特に医療・介護テクノロジーに関する現状整理と方向性を示しており、現場で働く方が確認しておく価値はあると思われます。

出典

  1. 令和8年版厚生労働白書(本文)(厚生労働省, 2026年9月29日公表)
  2. 医療AI活用、肯定7割超 厚労省調査、26年白書(秋田魁新報, 2026年9月29日)

本記事は情報提供を目的としており、特定の製品・サービスの推奨や、医療・介護効果の保証をするものではありません。