初回評価の30分は、担当期間の全部を決めてしまうくらい重いのに、いちばん練習の機会が少ない30分だと思います。養成校では「評価項目」は習います。ROM、MMT、感覚、バランス、ADL——項目名は言えるようになる。けれど「その項目を、30分のどこに、何分ずつ置くのか」は、ほとんどどこでも教わりません。
だから現場に出ると、多くの人がこうなります。問診で話を聞いていたら15分が過ぎ、慌ててROMとMMTを測り始め、測っているうちに残り3分になり、患者さんに何も説明できないまま「じゃあ次回から始めましょう」で終わる。カルテには数字だけが並び、翌日それを見返しても「で、この人の何を良くするんだったか」が自分でも分からない。私も新人のころ、これを半年くらい繰り返しました。
この記事は、その30分を分単位で設計し直すためのものです。要点を先に言うと、初回評価で足りなくなるのは時間ではなく「先に決めておくべきことを決めていない」ことによる手戻りです。何を測るかを現場で考えているから、時間が溶ける。逆に、配分と順番と切り捨て順を先に決めてしまえば、30分は意外と足ります。
なぜ30分が足りなくなるのか——原因は3つしかない
現場で初回評価が破綻するとき、原因はだいたい次の3つのどれかです。
1つめは、問診が「聞き取り」になっていること。 患者さんの話を遮らずに聞くのは大事ですが、初回評価の問診は仮説を立てるための情報収集であって、傾聴そのものが目的ではありません。目的が曖昧なまま聞くと、話は自然と長くなります。
2つめは、測る項目を現場で決めていること。 「とりあえずROM全部」「とりあえずMMT全部」と手を動かし始めると、測定が仮説検証ではなく作業になります。全関節のROMを測って何も分からなかった、という初回評価は珍しくありません。
3つめは、説明の時間を最初から確保していないこと。 説明は「余ったらやる」ものとして扱われがちですが、初回で患者さんが持ち帰るのは数値ではなく「この人は自分の何を分かってくれたか」という感触です。ここを削ると、2回目以降の関係づくりが全部きつくなります。
この3つを裏返すと、設計の方針が出ます。問診には目的と終了条件を持たせる。測定項目は問診の時点で絞る。説明の時間は最初に予約して、絶対に削らない。
30分をこう割る——5ブロックの時間配分
私が若手に勧めているのは、次の配分です。分数はあくまで基準で、疾患や状態によって前後させて構いません。大事なのは「配分を持っている」こと自体です。
| ブロック | 時間 | このブロックの唯一の目的 |
|---|---|---|
| ① 導入・主訴の確定 | 5分 | 「今日いちばん困っていること」を1つに絞る |
| ② 病歴・生活背景 | 5分 | 仮説の候補を2〜3個に絞り込む |
| ③ 観察・動作分析 | 5分 | 仮説を「見て」検証する |
| ④ 機能評価(触診・ROM・MMT等) | 8分 | 仮説を「触って・測って」検証する |
| ⑤ 統合と説明・目標共有 | 7分 | 患者さんと同じ絵を共有して終わる |
この表で驚かれるのは、たいてい2点です。ひとつは機能評価が8分しかないこと。もうひとつは説明に7分も使うこと。逆に感じる人が多いと思いますが、これは意図的です。
機能評価が8分で済むのは、①〜③で仮説がすでに2〜3個に絞られているからです。絞られていれば、測るべき項目は自然と5〜7項目になります。全身をしらみつぶしにする必要がない。逆に言えば、8分で終わらない初回評価は、測定が下手なのではなく、その前の絞り込みが終わっていないということです。
説明に7分を割くのは、初回評価の成果物が「データ」ではなく「合意」だからです。この人の問題は何で、何を目指し、次回から何をするのか。ここが患者さんと共有できていれば、多少データが粗くても次回で取り返せます。逆に、完璧なデータがあっても合意がなければ、2回目のリハビリは「言われたからやる」時間になります。
