「先週立てた目標、患者さんに覚えてもらっていましたか?」——この問いに自信を持って「はい」と答えられるセラピストは、案外少ないかもしれません。退院時要約や実施計画書に書いた「膝関節屈曲ROM 120度」「10m歩行自立」は、セラピストにとっては明確な指標ですが、患者にとっては「なぜその数字なのか」「それが達成されると自分の生活はどう変わるのか」が見えにくい。目標が患者の頭の中に残らなければ、自主トレへの動機も自然と薄れます。

リハビリテーションの国際的な潮流は、20年以上かけて「機能の回復」から「患者の生活目標との一致」へとシフトしてきました。その変化を牽引した概念がICF(国際生活機能分類、International Classification of Functioning, Disability and Health)です。ICFは障害を「欠損」として捉えるのではなく、「心身機能・構造」「活動」「参加」という3層で生活機能を記述し、環境因子・個人因子との相互作用を含めてとらえ直す枠組みです。

しかし実務でICFを「使っている」とはどういうことでしょうか。ICFコードをカルテに転記するだけなら、それは分類の道具にとどまります。ICFの真価は、患者が「やりたいこと・できるようになりたいこと」を引き出し、専門家とのあいだで合意できるゴールを設定するための共通言語として機能させることにあります。

この記事では、①ICFが目標設定の共通言語になる理由、②患者の「したいこと」を引き出す面接技術、③GAS(目標達成スケーリング)による数値化の手順、④実在論文6本のレビュー、⑤やってはいけない失敗パターン、⑥エビデンスの限界と注意点——の順に実務目線で整理します。結論を先取りすれば、ICFを使った目標合意プロセスは、患者満足度と目標達成率の両方を改善する可能性が示唆されており、その効果は「設定された目標の内容」よりも「合意に至るプロセス」に依存していると考えられています。

ICFが目標設定の共通言語になる理由

ICFは2001年にWHOが採択した分類体系です。その最も重要な貢献のひとつは、「何ができないか(欠損)」ではなく「どこで・何をしたいのか(参加)」を中心に据えた記述の枠組みを提供したことです。従来の医学モデルでは、疾患→機能障害→能力障害→社会的不利、という一方向の連鎖でとらえられていたものが、ICFでは「心身機能・構造」「活動」「参加」の3層が双方向に影響し合い、かつ「環境因子」「個人因子」という文脈変数がそれぞれの層に作用するという立体的なモデルに変わりました。

図1 ICF3層構造と目標設定の視点

目標設定においてこのモデルが重要なのは、機能レベルの目標と参加レベルの目標の間には「翻訳」が必要だからです。「大腿四頭筋MMT4以上」という目標は、セラピストには意味がありますが、患者には「なぜそれが必要なのか」が直感的に分かりません。一方「孫と一緒に公園の階段を上れるようになりたい」は患者にとって強烈な動機ですが、そのままではセラピストが何を訓練すればよいか曖昧です。ICFは、この2つの言語の間に橋を架ける役割を果たします。参加レベルの目標(公園の階段を上る)→活動レベルの目標(段差昇降が10段連続で可能)→機能レベルの目標(膝伸展筋力◯◯N以上、膝屈曲ROM◯◯度)、という逆算の構造が見えるようになるのです。

Hartyら(2011、PMID: 21978385)は、セラピストが設定した目標と患者が優先する目標を比較した研究の中で、専門家はボディ機能・構造レベルの目標を多く設定するのに対し、患者は活動・参加レベルの目標をより重視する傾向があることを報告しています。ICFの枠組みを共通言語として使うことで、この優先度のズレを可視化し、合意形成の起点にできる可能性が示唆されました。

さらに実務的な観点から重要なのは、ICFが「環境因子」と「個人因子」を明示的に取り上げる点です。「一人暮らし・エレベーターなし・3階」という環境や「もともとアウトドア派・職業は大工」という個人因子は、目標の水準と優先順位を大きく変えます。環境因子・個人因子を目標設定の場で明示的に確認することで、入院環境での訓練成果が退院後の生活環境で汎化しない、という最も多い失敗パターンを防ぐことができます。

患者の「したいこと」を引き出す技術——活動・参加から逆算する

理論的にはICFを理解していても、「患者にどう聞けばいいか分からない」という声は現場でよく聞かれます。機能の話を始めると会話が一方通行になり、「歩けるようになりたいです」という漠然とした答えしか返ってこない。そこで必要になるのが、活動・参加レベルで具体的な場面をイメージさせる質問の型です。

図2 患者インタビューから目標合意までのフロー

実務で使いやすい質問の流れは4ステップです。

ステップ1:「退院後・回復後にどんな生活をしたいか」を聞く(参加レベル)。「退院したら何をいちばんしたいですか」「もともとの生活で、いちばん楽しみにしていたことはなんですか」という開かれた質問から始めます。この段階では評価せず、患者が話すことを引き出すことに専念します。

ステップ2:具体的な場面に絞り込む(活動レベル)。「そのために、具体的にはどんな動作ができれば十分ですか」「たとえば1日で一番大変そうなシーンはどこですか」と聞くことで、参加目標を活動目標へ変換します。「庭で家庭菜園がしたい」という参加目標は、「しゃがんで草むしりができる」「10kgの土嚢を運べる」という活動目標に分解されます。

ステップ3:優先度と実現可能性を一緒に確認する。複数の希望が出た場合、「今挙げてもらった中で、まずこれさえできればという一つを選ぶとしたら?」と絞り込みます。同時に「3ヶ月後にどのくらいできていればOKだと思いますか」と、期待する回復水準をすり合わせます。この会話の中でセラピストは、医学的な見通しと患者の期待のギャップを把握し、必要であれば丁寧に情報提供します。

ステップ4:機能目標への逆算をセラピストが担い、患者と共有する。「その動作のためには、膝がこのくらい曲がる必要があります。いまはここまで曲がっているので、ここを目指して一緒に取り組みましょう」という形で、機能目標が参加目標と直結していることを見える化します。Lohmannら(2011、PMID: 21234515)は、ポストアキュートリハビリの患者69名のゴールをICFで分類した結果、患者の個別目標の大部分は活動・参加カテゴリに当てはまり、ICFはそれらを体系的に整理するうえで有用なフレームワークであると報告しました。

面接では「べきである」「すべきである」という言葉を使わないこと、セラピストが先に目標の候補を提示しないことが、患者の本音を引き出すうえで重要です。患者が「どうせ先生が決めるんでしょ」と思っていると、どれだけ丁寧に聞いても表面的な答えしか返ってきません。最初の質問の前に「今日は、あなたがどんな生活を目指したいかを一緒に考えさせてください。正解はないので、思ったことをそのまま教えてください」と一言添えるだけで、患者の参加度が変わることが臨床的に指摘されています。

GASで合意した目標を測定可能にする

患者と合意した「庭仕事ができるようになる」という目標は、そのままでは結果を測定できません。測定できなければ、目標が達成されたかどうかを患者と一緒に確認できず、進捗を見ながらモチベーションを維持することもできません。この問題を解決するツールがGAS(Goal Attainment Scaling:目標達成スケーリング)です。

図3 GASの5段階評価スケールの使い方

GASは、設定した目標ごとに「-2(はるかに悪い)」「-1(予想より低い)」「0(予想通り)」「+1(予想より良い)」「+2(はるかに良い)」の5段階の記述子を、事前に患者・セラピストが話し合って決める方法です。Turner-Stokes(2009、PMID: 19179355)はGASのリハビリへの応用手順を整理したガイドの中で、GASの真価は「目標が達成されたかどうか」を測るだけでなく、目標設定プロセス自体を構造化し、患者とセラピストの合意を言語化・文書化することにあると述べています。

具体的な手順を示します。たとえば「庭で草むしりが30分できる」を目標に設定した場合、次のように記述子を決めます。

0(期待水準):庭で15分程度の草むしりが自立して行えるようになる

+1(期待以上):庭で30分以上の草むしりが疲労なく行えるようになる

+2(大幅に上回る):庭作業だけでなく、買い物や外出も自立して行えるようになる

-1(期待を下回る):庭に出られるが、草むしりは5〜10分で休憩が必要

-2(大幅に下回る):庭に出ること自体が困難な状態

このように事前に記述子を決めておくと、「なんとなく良くなった」という曖昧な評価ではなく、患者自身が「あ、もう庭で15分できるようになったんだ、0に到達した」と実感できます。Krasny-Paciniら(2013、PMID: 23562111)は、リハビリ領域でのGAS活用に関する文献レビューを行い、GASはROMや筋力などの標準化された評価指標では捉えられない、個別性の高い目標の変化を測定するうえで補完的な価値があると報告しています。同時に、評価者のトレーニングが不十分な場合には記述子の幅が狭すぎたり、記述子を後付けで変更するバイアスが生じやすいという限界も指摘されました。

GASを複数の目標に使う場合は、T-スコアという加重集計式で目標ごとのスケールを統合し、一つの達成スコアとして表現することができます。ただしT-スコアの計算は目標の重みづけを含む複雑な計算式であり、日常臨床では「各目標の0(期待水準)をどれだけ達成できたか」を個別に確認するシンプルな使い方でも十分な情報が得られることが多いです。まずは1〜2個の最優先目標にGASを試してみて、記述子の設定に慣れることから始めると、臨床への導入のハードルが下がります。

実在論文6本レビュー——エビデンスが示すもの

論文①:Harty M et al.(2011)——ICFは患者と専門家の優先度のズレを可視化する

南アフリカで行われたHartyらの研究(PMID: 21978385)は、リハビリチームが設定した目標と患者が重視する目標をICFを使って比較分析しました。その結果、専門家は心身機能・構造レベルの目標を多く設定し、患者は活動・参加レベルの目標をより優先するという、系統的なズレが示唆されました。ICFの枠組みを会話の中で共有することで、このズレを明示的に議論できるようになることが報告されています。患者・家族・専門家が同じ言語(ICFのドメイン)でゴールについて話せる環境を整えることが、患者参加型の目標設定の第一歩であることを示唆した研究です。

図4 実在論文6本レビューマトリクス

論文②:Lohmann S et al.(2011)——患者の個別目標はICFで体系的に分類できる

ドイツのポストアキュートリハビリ施設で行われたLohmannらの研究(PMID: 21234515)は、患者69名の個別目標を収集し、ICFカテゴリへの対応を分析しました。患者が自発的に挙げた目標の大部分は「活動」と「参加」のドメインに属していたという結果が示され、ICFがその分類に十分な網羅性を持つことが確認されています。また、ICFを使って患者目標を分類することで、他職種間での目標の共有と一貫したアプローチが促進される可能性が示唆されました。小規模研究のため外挿には注意が必要ですが、ICFの実務応用の基礎を固めた重要な文献です。

論文③:Rice DB et al.(2017)——脳卒中リハビリにおける患者中心の目標設定

Riceらの研究(PMID: 28082180)は、病院外来の脳卒中リハビリセンターにおける患者中心の目標設定の実態を分析したものです。ICFカテゴリに沿って目標を分類し、患者の目標満足度との関連を検討した結果、活動・参加カテゴリに属する目標を設定した患者群では、機能・構造カテゴリのみの目標を設定した群と比較して、目標への主観的な意味づけが高まる傾向が示唆されました。脳卒中後という高い心理的負荷がかかる場面での目標設定において、患者の生活文脈に即したゴールを明示することの重要性を支持する研究です。

論文④:Turner-Stokes L(2009)——GASのリハビリ実務への応用ガイド

Turner-Stokes(PMID: 19179355)はGASの手順・採点法・臨床応用のポイントをリハビリ専門職向けに整理した実践的なガイドを発表しました。GASの5段階記述子を「患者と一緒に」事前に設定することが、患者の目標への主体的関与を促し、達成時の自己効力感を高める可能性があると述べています。また、記述子を記録しておくことで、セラピストが変わっても同一の目標水準で評価が継続できるという利点が指摘されています。長期通院患者や多職種チームでの活用において、GASが共通の物差しとして機能することを示した基礎文献として広く引用されています。

論文⑤:Krasny-Pacini A et al.(2013)——GASの文献更新レビュー

Krasny-Paciniら(PMID: 23562111)は、2002年の先行レビュー以降のGAS関連文献を系統的に更新し、リハビリ分野での活用状況を整理しました。GASは神経リハビリ・老年医学・小児リハビリなど広範な領域で使用されており、標準化された結果指標と組み合わせて使うことで、画一的な指標では捉えきれない個別目標の変化を補完的に評価できると報告されています。一方で、評価者間信頼性の確保には記述子の文言の標準化と評価者トレーニングが不可欠であること、目標の難易度を均一にしないと集計の公平性が損なわれる可能性があること、などの課題も明示されています。

論文⑥:Smit EB et al.(2019)——高齢者リハビリにおける目標設定の系統レビューとメタアナリシス

Smitら(PMID: 30537854)は、高齢者リハビリにおける目標設定の効果を検討した23件の研究を対象に系統的レビューとメタアナリシスを実施しました。主要な知見として、患者参加型の目標設定は機能回復の指標には必ずしも明確な優位性を示さないものの、患者の目標達成感・满足度・自己効力感の改善との関連が示唆されたと報告されています。「目標設定をするかしないか」ではなく「どのように目標設定をするか」というプロセスの質が結果を左右する可能性が示唆された点は、実務的に重要な示唆を含みます。ただし、含まれた研究のバイアスリスクのばらつきが大きく、エビデンスの確実性は中程度にとどまると著者らは述べています。

やってはいけない目標設定——6つの失敗パターン

エビデンスと実務の両面から、避けるべき目標設定の形を整理します。

図5 目標設定の6つの失敗パターンと対策

失敗パターン①:機能目標だけを設定し、参加目標との連結を示さない。「ROM 120度」「MMT 4」という目標は測定しやすいが、患者がその意味を理解していなければ自主トレへの内発的動機は生まれません。機能目標を設定するときは、必ず「これが達成されると、◯◯ができるようになります」という形で参加・活動目標と紐づけます。

失敗パターン②:専門用語だけで目標を説明する。「脊柱管狭窄症のクロデカウジナ症候群に対して腰椎安定化訓練によりVASを改善する」という記述は患者向けではなく、患者に伝えるべき目標ではありません。目標の説明は中学生に伝わる言葉で行うことを原則とします。

失敗パターン③:患者の同意なく目標を決定する。「この患者はこのゴールでよいだろう」とセラピスト側で完結させると、患者は目標を「自分のもの」と感じられません。所有感のない目標は追いかけられません。面接に十分な時間が取れない場合でも、少なくとも「この目標でよいですか」という一言の確認は省かないことが重要です。

失敗パターン④:実現不可能な目標を患者に合わせて設定する。患者が「完全に元通りになりたい」と望んでいるとき、それをそのまま目標にしても達成できなければ信頼関係が損なわれます。医学的な見通しを丁寧に伝えつつ、患者が重視する活動・参加の中で「今の状態で最も実現可能なもの」を絞り込む対話が必要です。

失敗パターン⑤:目標を設定したまま定期的に見直さない。3ヶ月前に立てた目標が、身体状況の変化・家族構成の変化・患者の意欲の変化によって意味を失っていることはよくあります。少なくとも月1回、「今もこの目標が一番大事ですか」と確認することで、古い目標に縛られた訓練という非効率を防げます。

失敗パターン⑥:目標を一方的に変更・格下げする。患者が目標に向かって努力しているときに、セラピスト側の都合や保険上の制約から目標水準を下げることがあります。これが必要な場合は、必ず患者に理由を説明し、新しい目標への合意を取り直します。説明なき目標の変更は、患者の信頼と動機を同時に奪います。

限界と注意点——この知見で言えないこと

本記事で紹介した知見には、以下の限界と留保が伴います。実務での適用にあたって誠実に把握しておくべき点を整理します。

図6 エビデンスの射程と限界

  • RCTエビデンスが少ない:本記事で紹介した研究の多くは観察研究・横断研究・事例研究です。ICFを用いた目標設定プロセス自体が機能回復アウトカムを向上させるという因果的な証明はまだ不十分であり、既存のRCTはプロトコルの異質性が高く、メタアナリシスでも効果量の信頼区間が広い傾向があります。

  • 日本の臨床環境での検証が乏しい:紹介した研究の多くはヨーロッパ・北米・南アフリカで行われており、日本の入院リハビリ環境(20分/単位という時間制約、診療報酬の制約、面接に割ける時間の短さ)での再現性は検証されていません。日本の実情に合わせた目標設定面接の時間短縮版・電子カルテ組み込み版については今後の研究が必要です。

  • GASの普及・トレーニングに関するコストの問題:GASは有用なツールですが、記述子の設定にはトレーニングが必要であり、評価者間信頼性の確保も課題として残っています。現場導入に際しては、まず1〜2項目の目標に試験的に適用し、徐々に拡大していくアプローチが現実的です。

  • 高齢者・認知機能低下患者への適用の限界:認知機能が低下した患者では、自己の目標を言語化する能力が制限される場合があります。このような場合には、家族や介護者を交えた目標設定面接、または代理意思決定の枠組みが必要となり、本記事で示した手順をそのまま適用することはできません。

  • 外挿の範囲の明示:Smitらのメタアナリシスは高齢者リハビリを対象としており、若年の整形外科患者・スポーツ復帰を目指す患者・慢性疼痛患者などへの外挿には注意が必要です。対象集団・疾患特性・訓練環境が異なる場合は、別の研究を参照するか、仮説として扱うことが適切です。

まとめ——「目標の言語」を患者と揃えることが第一歩

ICFは、セラピストが患者に「伝わる言葉で目標を語る」ための共通言語です。心身機能の数値目標から始めるのではなく、患者の「やりたいこと」から逆算して機能目標へ落とし込む順序の転換が、患者の主体的参加と目標の定着を促すと示唆されています。GASはその目標を測定可能にし、達成を患者と一緒に確認できる形にするツールです。二つを組み合わせることで、「なんとなく良くなった」から「一緒に決めた目標に到達した」へと、リハビリの物語を変えることができます。

完璧な目標設定面接は、最初から実現できなくて構いません。今日の外来の一人の患者に「退院したらまず何がしたいですか?」と聞くことから始めてください。その一言が、患者中心の目標設定の最初の一歩です。

よくある質問

Q1. ICFのコードを毎回入力しないといけませんか?

コードの入力は必須ではありません。ICFを「目標設定の会話の地図」として使うだけでも、患者との対話の質は変わります。コードは記録・研究・多職種共有の場面で便利なツールですが、臨床面接の場では「心身機能」「活動」「参加」の3層を意識した問いかけをするだけで十分です。ICFを形式として運用するより、思想として使うことを優先してください。

Q2. 目標設定に時間がかかって、単位内に収まりません。どうすればよいですか?

初回評価の時点で5〜10分の「目標面接」を設けることが理想ですが、難しい場合は2〜3回のセッションに分散させる方法があります。「今日は動きをみます。次回、どんな生活を目指したいか一緒に考えましょう」と予告しておくだけで、患者側の準備もできます。短縮版として、「退院後いちばん大事にしたいこと一つ」を聞くだけでも、目標の共有の糸口になります。

Q3. 患者が「先生に任せます」と言って、目標を言ってくれません。どうすればよいですか?

「任せます」という答えの背後には、「自分の希望を言っても叶わないだろう」「専門家に従うべきだ」という過去の経験や文化的背景がある場合が多いです。まず「どんなことでも、どんな小さいことでも構いません」と伝え、「以前の生活で、なにか好きだったことや楽しみにしていたことを教えてもらえますか」という、目標とは切り離した質問から入ることが有効です。患者が言葉を発すれば、そこから引き出していく入口ができます。

出典(すべてPubMedで確認済み)

  1. Harty M et al. The ICF as a common language for rehabilitation goal-setting: comparing client and professional priorities. Health Qual Life Outcomes. 2011;9:87. DOI: 10.1186/1477-7525-9-87(PubMed: 21978385)

  2. Lohmann S et al. The ICF forms a useful framework for classifying individual patient goals in post-acute rehabilitation. J Rehabil Med. 2011;43(2):151-5. DOI: 10.2340/16501977-0657(PubMed: 21234515)

  3. Rice DB et al. Patient-Centered Goal Setting in a Hospital-Based Outpatient Stroke Rehabilitation Center. PM R. 2017;9(9):856-865. DOI: 10.1016/j.pmrj.2016.12.004(PubMed: 28082180)

  4. Turner-Stokes L. Goal attainment scaling (GAS) in rehabilitation: a practical guide. Clin Rehabil. 2009;23(4):362-70. DOI: 10.1177/0269215508101742(PubMed: 19179355)

  5. Krasny-Pacini A et al. Goal attainment scaling in rehabilitation: a literature-based update. Ann Phys Rehabil Med. 2013;56(3):212-30. DOI: 10.1016/j.rehab.2013.02.002(PubMed: 23562111)

  6. Smit EB et al. Goal-setting in geriatric rehabilitation: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2019;33(3):395-407. DOI: 10.1177/0269215518818224(PubMed: 30537854)


本記事は教育・情報提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。個々の患者さんへの適用は担当セラピストの専門的判断のもとで行ってください。

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